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山下直久

静岡県浜松市

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円安で金価格急騰、高まる投資ニーズ アベノミクスいつまで続く?2013/2/25

2013年02月25日 18:39

円安で金価格急騰、高まる投資ニーズ アベノミクスいつまで続く?

フジサンケイビジネスアイ2013年2月25日(月)08:21

 金の国内価格が約33年ぶりの高値圏で推移している。欧州など世界経済に対する懸念から、安全資産とされる金に資金が流れ込んで国際相場が上昇した上、昨年11月からの円安進行で円換算の国内価格が押し上げられたからだ。現物を購入するよりも手軽な金のETF(上場投資信託)が個人の投資機会を拡大し、信託銀行が企業の年金運用向け商品に金を組み込む動きも出てきた。安倍晋三政権がデフレ脱却を実現できれば、現金の相対的な価値低下につながるため、金投資がこれまで以上に注目される可能性もある。

 「こちらの7点、58万円で買い取らせていただきます」

 東京都中央区にある貴金属買い取り店「ゴールドプラザ」。男性店員の提示額に豊島区の主婦、山口千嘉さんは驚いた。使わなくなったネックレスや指輪を持ち込んだが「ここまで高くなるとは思わなかった」という。同店では「為替が円安になり始めた昨年末から金の買い取りを希望する方が増えている」といい、来店客や電話での問い合わせに忙しく対応していた。

 金を売る人が増えている背景には価格上昇がある。田中貴金属の小売価格でみると、今月22日は1グラム5000円。直近の高値は今月7日の5325円で、昨年11月の月間平均から約18%急騰、1980年3月以来の高値となった。東京商品取引所の金先物価格も今月上旬、6営業日連続で上場来最高値を更新した。

 金価格は足元ではやや落ち着いているが、主要先進国の経済や金融に対する懸念が依然続いていることもあって、今後も堅調に推移するとみられている。

 国際的指標となるロンドン市場での価格は、2008年9月のリーマン・ショック後に1トロイオンス(貴金属の重量単位、約31グラム)=1000ドルを突破。ギリシャの財政問題を機に欧州経済危機が広がるなか、ドルやユーロなどの基軸通貨や株式などのペーパー資産への懸念が高まり、現物に裏打ちされた金が買われ、11年には1800ドル台の高値水準をつけた。

 国際価格を円換算する国内価格については、為替相場が円高だったため抑えられていた。しかし、昨年末に発足した安倍内閣が大胆な金融緩和を柱とする経済政策「アベノミクス」を推し進める中、為替相場が1ドル=90円台前半まで円安に修正されてきたことで、本来の上昇分が急激に反映されてきた。

 このため、国内では個人や機関投資家による金投資へのニーズが高まっている。東証に上場する金のETFで、個人投資家による売買も多い「純金上場信託」は、今年1月の売買代金が87億円と前年同月から倍増。金現物・先物大手の第一商品によると、定期的に開催しているセミナーでは若年層の姿も目立ち始めたという。政府・日銀は2%の物価上昇目標を決めたが、実際にインフレになると現金の価格が相対的に下がるため、金投資がさらに注目されると考えられる。

 企業年金も一部で、株や債券の値動きとの相関性が低くリスク分散につながるとして金投資へ動く。三菱UFJ信託銀行が昨年3月から企業の年金運用向け商品に提案している金ETFは現在2社が採用。みずほ信託銀行が11年3月に提供を始めた金ETFを約3%組み込んだパッケージ型商品は約200社が導入している。

 米国では、年初に懸念された大型減税の失効と巨額の歳出削減が重なる「財政の崖」がひとまず回避された。欧州でもユーロ圏の景気は底を打ったとの見方も出てきたが、金価格は今後どうなるのか。

 貴金属市場の調査を手がけるトムソン・ロイター・GFMSは1月のリポートで、13年の平均価格は1トロイオンス=1847ドルと12年平均の1669ドルを上回る見通しを示した。「主要国で金融緩和が続いており、経済成長は依然弱い」ため安全資産とされる金投資を押し上げるとみる。

 金市場の調査などを行う団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)も13年について、宝飾需要は減少傾向にあるものの、投資需要や中央銀行による買い入れの継続で堅調に推移すると予測。森田隆大日本代表は「長期的にドルへの信認などがどうなるかが重要だ」と話す。

 国内価格について、第一商品の村上孝一アナリストは「夏の参院選まで安倍政権は政策推進の手を緩めないため、さらなる円安による一段高も狙える。史上最高値(80年1月の1グラム6495円)をつける可能性もある」と読む。アベノミクスによる円安がいつまで続くかが価格動向を決める。(金谷かおり)