電力の小売り、16年めどに全面自由化 改革方針を閣議決定
政府は2日、家庭が電力会社を選べるよう電力の小売りを2016年をめどに全面自由化することを明記した「電力システムに関する改革方針」を閣議決定した。改革は15~20年までに3段階で実施し、大手電力の発電部門と送配電部門を別会社にする発送電分離は18~20年をめどに実現を目指す。大手電力会社が独占する家庭向け電力供給体制を崩し、再生可能エネルギー事業者などの新規参入を促して料金やサービスの多様化を狙う。
安倍晋三首相は閣議前に開いた日本経済再生本部で、改革の実施時期などを盛り込んだ電気事業法改正案を今国会に提出するよう茂木敏充経済産業相に指示した。茂木経産相は会見で「消費者にとって料金メニューで選択の幅が広がる。支払う電気料金の低下にもつながる」と改革の効果を強調した。
今国会に提出する改正案には、全国規模での電力需給の調整を担う「広域系統運用機関」を15年をめどに設立することを盛り込む。同機関は全国各地域での需給計画や電力供給網の整備計画をとりまとめるほか、震災などの緊急時に電力会社が最適な需給調整を行えるようにするなど、地域的な電力不足が発生するのを防ぐ。
電力小売りの全面自由化と発送電分離は制度設計に時間がかかることから改正案の付則にとどめ、制度の詳細を詰めた上で改めて段階的に法案を提出する。
発送電分離は送配電網を新規事業者に公平に開放する狙いがあるが、電力業界などから「安定供給に支障が出る」との反発が強い。このため、改革方針では、発送電分離の法案提出時期について当初は15年通常国会に「提出する」としていたのを「提出することを目指す」に表現を弱めた。