<淡路島地震>「阪神より揺れた」 民家の瓦落ち、液状化も
毎日新聞 - 2013年04月13日 11:54
写真![]() 強い揺れで屋根瓦が落ち、骨組みがむき出しになった家屋=兵庫県洲本市で2013年4月13日午前8時20分、本社ヘリから山崎一輝撮影 |
阪神大震災より大きな揺れを感じた--。震源と発生時間が、死者6434人を出した阪神大震災とほぼ同じだった今回の淡路島地震。民家の瓦が落ち、液状化現象もみられ、小学校では運動場が地割れをするなど、18年前の悪夢がよみがえった。一方で前回の教訓を生かし、住民の多くは冷静に対応、大きな人的被害はなかった。【山川淳平、登口修、岸川弘明、岡奈津希、豊田将志】
震源に近い兵庫県・淡路島。県警によると正午現在、同島では、地震の揺れによる落下物で頭をけがしたり、窓から出ようとして足を骨折するなどのけが人情報が8件、寄せられた。骨折以外は軽傷とみられる。
同県淡路市では、砂が地下水と共に地上に噴き出す液状化現象が発生。地域によっては水が噴出し、数十メートルの範囲が水浸しとなった。舗装された駐車場でも、車の周囲に水があふれた。また、同市の野島断層保存館に展示している断層面に、数センチから数十センチの多数のひびが見つかった。保存館によると、ひびは以前からあったものか、今回できたものかどうかは分からないといい、今後、詳しく調べる。阪神大震災では、この断層が地震を起こしたとみられている。
同県洲本市宇山1の市立洲本第一小学校では、運動場に地割れが見つかった他、敷地内の排水溝のコンクリートが崩れるなどの被害が出た。同校によると、運動場の地割れは蛇行しながら20~30メートルに及び、最大幅約10センチの溝ができていた。一部では片側が10センチほど隆起、サッカーのゴールポストも傾いていた。同校の居内秀樹校長(59)は「危険な箇所は立ち入り禁止にする。校舎の他にも、児童の通学路などに危険がないか手分けして調べる」と話した。
さらに洲本市役所横の公設市場では、2階にある食堂の水道管が破裂、1階店舗の一部が水浸しになった。果物店を経営する近江正さん(65)は「心配になって店に来たら床が水につかっていた。商品は缶詰が棚から落ちるくらいで済んだけど、贈答用の箱がびしょぬれで使えなくなった」とため息をついた。
同市本町4のうどん店経営、渡孝昭さん(70)方では、住居兼店舗1階の店の棚に並べていた皿やどんぶりなどの食器の一部が落ちて割れ、地面に散乱した。渡さんは「トイレを済ませて2階の寝室に上がったところ、ドーンという激しい揺れが起きて、思わず尻餅をついた」。隣の中華料理店でもコンクリートの外壁にひびが入るなどの被害も。店主の方城慶明さん(64)は「夫婦で寝ていたところ、揺れで跳び起きた。冷蔵庫が動いたり、食器棚や本棚が倒れたりした」と語った。
同市炬口(たけのくち)地区では、古い民家の屋根瓦が崩落するなどの被害が相次いだ。道路には落ちた瓦が積み重なり、通行を妨げた。同市炬口1の主婦、浜田光永さん(62)方では屋根瓦の半分近くがずり落ち、屋根の一部が崩れ落ちて穴が開く被害が出た。浜田さんは「阪神大震災の時にも屋根瓦と壁の一部が落ちたが、今回の方が被害が大きい」と話した。
近くの無職、竹岡健一さん(72)は「木造2階建ての屋根の半分がずり落ちてしまった。散歩から帰って居間にいたが、ドーンときてストーブの火が消え、家具が倒れるなどの被害が出た」と振り返った。淡路市浅野南の無職、浜口敦生さん(65)は「ゴミを出そうと家の中で準備をしていると揺れ始めた。タンスや冷蔵庫が揺れ始め、立っていられなくなったので机をもって中腰になった。阪神大震災の時はドンと揺れたのでもうだめかと慌てたが、その経験があったので、今回は冷静に対応できた」と落ち着いた様子で話した。
同市の国道28号沿いでは、民家の石塀が道路側へ倒壊した。住人の中学校教諭の男性(57)は「阪神大震災では縦に大きく揺れたが、今回は横にグラグラと揺れた。揺れた時間は短かったが、揺れそのものは今回の方が大きかった」。また、同市の対策本部に詰めた金村守雄・市長公室長(60)は「阪神大震災と比べれば揺れは短時間だったが、それでも大きな揺れだった。もしかして『南海トラフ地震』が来たのかとも思った」。自宅ではパソコンが机から落ちたり、棚の上のものが床に散乱するなどの被害があったという。
同市生穂の生穂漁港では、地元漁協が新設した卸売市場の荷さばき所の地面に大きな亀裂が入った。漁協の男性職員は「24日に竣工(しゅんこう)式を控えていた矢先だった。延期の可能性が高く、非常に残念」と肩を落とした。
洲本市下加茂の寳林寺(手塚裕文住職)では寺を囲む壁が数メートルにわたって崩れた。住職の母貞子さん(79)は「震災の時にひびがはいっていたので、危ないとは思っていたが、まさか崩れるとは」と驚いていた。
淡路市志筑の市立津名図書館では、約15万冊の書籍のうち約半分が棚から落ちて床に散乱、急きょ休館となった。
◇「18年前思い出した」阪神大震災経験者
阪神大震災は95年1月17日午前5時46分に起きた。今回の地震も同じ淡路島近くが震源で、発生は午前5時33分ごろ。同じ早朝の揺れに、阪神の被災者らは「あの日」の恐怖がよぎるなか、備えの大切さを感じていた。
阪神大震災で右足に後遺症を負った「震災障害者」の岡田一男さん(72)は、警備員として勤務する百貨店「大丸神戸店」(神戸市中央区)に泊まっており、仮眠室で激しい横揺れを感じた。阪神の体験から、大きな柱のある場所に移動し、しゃがみ込んで耐えたという。
岡田さんは18年前、自宅マンションの下敷きになり、後遺症で右足をひきずらなければ歩けなくなった。
この日の地震で18年前の悪夢が脳裏をよぎった。一時、エレベーターも停止したため、階段を上り下りして被害がないことを確認した。岡田さんは「揺れがあるたび、18年前を思い出す。巨大地震に備えなければならないと感じた」と話した。
また、東日本大震災の被災者も再び揺れに見舞われた。宮城県多賀城市で被災し、神戸市垂水区で避難生活を送る大塚三恵さん(63)は「地震列島のどこに移り住んでも、安心できるところはないと思い知った」と声を震わせた。【桜井由紀治、内橋寿明、椋田佳代】