がんばろう日本!

山下直久

静岡県浜松市

naohi7955@yahoo.co.jp

官製バブル襲来!日銀超緩和の副作用 2 2013/4/21

2013年04月21日 20:24

国債市場を占拠する日銀

株高や円安などプラスの効果ばかり見えやすい異次元緩和。しかし、一般の人にはなじみの薄い債券市場は大きく荒れた。

日銀は月間で約7.5兆円の国債を買い入れる。これに対し政府が毎月発行する国債は約10.5兆円。実質的には日銀が市場に出てくる新たな国債の約7割を吸い上げる。要は、国債市場における日銀の寡占化である。前出の松沢氏は「最大で月間7兆円の買い入れを予想していたが、それを一気にやるとは思わなかった。国債の買い入れ策はこれが限度だろう」と話す。

金融政策発表翌日の5日、10年国債の長期金利は史上最低の0.315%まで下げ、その後は一転して売りが膨らんだことで0.62%まで上昇。先物市場では債券価格の急落を受け、取引を2度停止し値幅制限を拡大している。取引中断はリーマンショック後の08年10月以来だ。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「債券市場が壊れた。もはや自由な取引市場ではない。“官製相場”になる」と話す。

実質的に日銀が国債市場を占拠し、金利をとことん押さえ込む。そうすると、銀行や生保、年金基金は従来どおりに国債で運用したのでは、想定していた利回りが確保できなくなる。調達したおカネを寝かせておくわけにはいかないため、比較的利回りの高い外国債券や株式などのリスク資産を買う選択肢が出てくるというわけだ。

ただ、大胆な買い入れで思惑どおり民間の投資行動が変わる保証はなく、変わることが単純によいことともいえない。

運用担当者たちは困惑のさなかにある。地方銀行からは「こんなに乱高下する国債の運用を、今後も続けられるのか」という嘆きが聞こえる。別の銀行関係者は「年度初めに決めたばかりの市場運用方針を見直す必要がある。かといって、ほかに買える資産はそうそう見当たらない……」と漏らす。

銀行は日本のバブル崩壊により株式で大損をした経験から、株式投資を減らし、リーマンショックの経験から、外貨建て証券化商品への投資を手仕舞いした。そして、増え続ける預金の運用のほとんどを国債に充当してきた。金融庁や日銀などの規制当局も日本の金融システムの安定化の観点から、株式や為替のリスクを削減する方向へ規制強化を行ってきた。これは国際的な潮流でもある。

国債という安定した運用先を失うのみならず、市場金利の低下の影響で貸出金利も一段と落ちることになる。運用難で、銀行の基幹利益は間違いなく低下する。そこへ大口の倒産などで与信費用が膨らめばたちまち赤字に陥る。自己資本に余力のない中小の金融機関が経営難に陥るおそれがある。「日銀の超金融緩和で、業界再編の動きが加速するかもしれない」(シティグループ証券の高橋克英クレジット・スペシャリスト)という見方もある。また、生命保険会社も再び逆ザヤに陥る懸念が高まる。黒田日銀は金融システムの健全性を犠牲にしてもよいと考えているのだろうか。

さらに、財政への影響も見過ごせない。仮に民間金融機関の国債市場からの“追い出し”が成功した場合、国債市場の流動性が大幅に低下し、金利動向がますます不安定化するおそれもある。

バークレイズ証券の森田長太郎チーフストラテジストは「今回の政策は債券市場関係者からすれば一線を越えた印象を受ける。国債市場の裏側に1000兆円の国家の債務があることを忘れてはならない」とし、「(金融危機や震災など)予想せざる外的なショックにより国債市場が暴落した場合、はたして日銀が国債を買い支えることができるのか。中央銀行が追い込まれるリスクを避けるためにも、市場機能をきちんと保つ必要がある」(森田氏)という。

※ 記事の続きはこちら

 (週刊東洋経済2013年4月20日号)